見えない、聞こえない方の通報。

豆知識

耳が聞こえない、あるいは見えにくいといった障害をお持ちの方が、万が一の火災や急病の際にどのように119番通報を行うかは、命に直結するとても重要な問題です。

現在、日本の消防では、どのような障害があっても「24時間・365日・いつでも・誰からでも」確実な通報を受け付けられるよう、専用のシステムや工夫を用意しています。その具体的な方法について、分かりやすく説明します。

1. 聴覚障害者(耳が聞こえにくい方)の通報方法

言葉での会話が難しい方のために、文字や映像、スマートフォンを使った最先端の通報システムが整っています。

Net119緊急通報システム(スマートフォン・携帯電話)

現在、全国の消防で最も普及しているのが「Net119」です。 事前にスマートフォンなどで登録しておき、画面上の「火事」や「救急」というボタンをタップするだけで通報ができます。

  • GPSでの位置特定: しゃべらなくても、スマホのGPS機能でどこにいるかが消防の通信指令室に瞬時に伝わります。
  • チャット機能: 「どこが痛いですか?」「胸が苦しい」といったやり取りを、画面上の文字(チャット)でリアルタイムに行うことができます。

FAX119(ファックス)

自宅にあるFAXを使って通報する方法です。 専用の通報用紙(「火事」「救急」のチェック欄、住所、氏名、現在の状況を書き込める紙)をあらかじめ用意しておき、119番へ送信します。消防に届くと、すぐに「了解しました。今から向かいます」という返信FAXを送り返す決まりになっています。

電話リレーサービス

2021年から国の制度として始まったサービスです。 スマホのアプリなどを通じて、手話通訳オペレーターにビデオ通話で状況を伝えると、そのオペレーターが代わりに119番へ電話をかけ、通訳をしながら消防へ繋いでくれます。

2. 視覚障害者(目が見えにくい方)の通報方法

目が見えにくい方の場合、音声による通報(通常の119番電話)がメインになりますが、「自分のいる場所を正確に伝えること」が一番の課題になります。そのため、以下のような方法や工夫が行われています。

スマホの音声アシスタント機能スマホの音声アシスタント機能

最近は、スマートフォンの音声認識(「ヘイ、シリ」や「オッケー、グーグル」など)を使い、声だけで119番を発信する方法を使う方が増えています。

固定電話からの通報(位置の自動特定)

自宅の固定電話(黒電話や光電話など)から119番にかけると、消防のシステムには自動的に「契約者の住所」が表示されます。そのため、もしパニックになって住所が言えなくなっても、受話器に向かって「火事です!」「助けて!」と叫ぶだけで、消防隊は場所を特定して出動することができます。

周囲の環境(音や匂い)を伝える

外出先で場所が分からないときは、以下のような情報を伝えてもらいます。

  • 「近くでカンカンと踏切の音がする」
  • 「カレーの匂いがするから、飲食店の近くだと思う」
  • 「自動販売機が目の前にある(自販機には住所が書かれたステッカーが貼ってあるため、その文字を触って探してもらうこともあります)」

通報事例

深夜の指令室に響く、119番の無言電話。何も言わない相手に、新人消防士はふと、ある可能性を思い浮かべました。「失語症かもしれない」(脳の障害などが原因で、知能や意識は保たれているのに 「話す・聞いて理解する・読む・書く」といった言葉の機能がうまく使えなくなる状態を指す用語です。脳卒中後に見られることが多いとされています

「もしもし、私の声が聞こえていたら、受話器を2回トントンと叩いてください」

受話器の向こうから、かすかに響いた「トントン」という小さな音。それは、暗闇の中で必死に差し出された、命のSOSでした。

「はい、聞こえましたよ。救急車が必要な場合はもう一度2回叩いてください。」

「トントン」

「もう大丈夫です。今からすぐに救急車が向かいます。」

声を出せなくても、一本の電話線を通じて交わされた、力強いノックの音が、絶望の淵にいた一人の命をしっかりと救い出したのです。

まとめ

消防ではこうしたシステムを日々進化させていますが、一番の頼りになるのは「周囲の皆さんの声かけ」です。

もし街中で、困っている様子のお身体が不自由な方を見かけたら、「どうしましたか?代わりに119番しましょうか?」と一言声をかけてあげてください。その優しい行動(共助)が、消防車や救急車を最も早く現場へ導く力になります。

以上、報告終わり!

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