消防署の朝は、鳴り響くサイレンではなく、金属がぶつかる音と鋭いかけ声から始まります。
消防士たちが毎朝欠かさず行う「運行前点検(車両点検)」がいかに重要か、そしてそれがどう「事故防止」に直結しているのかをお話しします。
消防車にとっての「点検」は命の保証
①タイヤチェック
- 亀裂や異物のチェック: 小さな石が挟まっているだけで、高速走行中にタイヤが破裂(バースト)する危険があります。
- 空気圧の確認: 左右のバランスが悪いと、急ブレーキをかけた際に車体が振られ、横転事故につながります。
② 灯火類とサイレン(接触・衝突事故防止)
緊急走行中、周囲の車や歩行者に「消防車が来る」と知らせる唯一の手段が赤色灯とサイレンです。 - 視認性の確保: ライトが一つ切れているだけで、交差点での見落としが発生し、衝突事故のリスクが跳ね上がります。
- 音の確認: サイレンの音が小さい、または変わった音がしないかを耳で確かめます。
③ ブレーキとオイル(確実な停止と走行)
「止まる」ことは「走る」ことよりも重要です。 - ブレーキの遊び: 踏み込んだ時の感覚がいつもと違わないか、ミリ単位の感覚を体に叩き込んでいます。
- 液漏れの確認: 車体の下にオイルや水が漏れた跡がないか、地面を必ず這いつくばって確認します。
「指差し呼称」が防ぐヒューマンエラー
点検中、私たちは「タイヤよし!」「ライトよし!」と大きな声を出して指を差します。これは単なる気合入れではありません。
人間は、毎日同じ作業をしていると「たぶん大丈夫だろう」という思い込み(正常性バイアス)に陥ります。声に出し、指を差して自分の目で確認することで、脳を覚醒させ、「見落とし」という最大の事故原因を物理的に排除しているのです。
現場での事故を防ぐ「資機材点検」
運行前点検には、車本体だけでなく、積んでいる道具(資機材)の点検も含まれます。
- ホースやノズル: 現場で水漏れが起きれば、消火が遅れるだけでなく、水の反動で隊員が負傷する事故につながります。
- エンジンカッター: 救助で使う機械が動かなければ、救助が遅れます。
「道具の不備=現場での二次災害」という意識を全員が共有しています。
まとめ:事故防止は「心の点検」から
実は、運行前点検にはもう一つの隠れた目的があります。それは「隊員の心のスイッチを入れること」です。
点検を通じて車両の状態を把握し、仲間と声を掛け合うことで、「今日も無事に帰ってくる」という安全意識がチーム全体に浸透します。事故防止の最後の一線は、やはり「絶対に事故を起こさない」という私たちの強い意志なのです。
消防車が街を走っているのを見かけたら、「今朝も完璧に点検された車が、誰かを助けに行っているんだな」と思って安心してください。
以上、報告終わり!


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